"internethood"というイベントをやる

11月頃、チャンネル登録していたおかげでこの動画が流れてきた。

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Miraieという人は以前からチェックしていて、いってみればアニメ/ゲーム好きの古風なオタクのYouTuberでありながら、hyperpop/digicoreシーンとも関わる若手アーティストだったりして、このシーンとオタクカルチャーの蜜月具合を再認識させられるというか、こういう人がラッパーとしてプロップスを集めていること自体が面白いな〜とか思っていた。

そんなMiraieが日本に来るのだからどうにか取材ができないものかと考え、誰に依頼されるわけでもなく、とりあえずDMを送ってみた。ウン万とフォロワーのいるMiraieであればメッセージリクエストのミノに隠れてしまうことがわかっていたので、直近の投稿に「Check My Message!」とコメントする、よく見るSNS仕草をやってみたのである。

そんなこんなで諸々省きまくるが、取材は明日に迫り、その上明後日にはイベントを開催することになった。"internethood"というイベントはMiraieありきで企画されたものだった。

以前から国内外のhyperpop/digicoreシーンを見ていて、ネットさえあればグローバルに繋がっていくフットワークの軽さがいいなと思っており、自分もそれに倣って好きなアーティストを海外のライターにメールで送りつけるなどしてきたが(Billie Bugaraは反応してくれたり)、今回を機に繋がるアーティストが出てくると嬉しい。国内のマーケットだけで戦うのはなかなか修羅ってるわけだし、シーンが開けていくことを願っている。

hyperpop/digicoreともうひとつ、ボカロ文脈を交えたかったのは、直接的にはMiraieがボカロを取り入れた楽曲を発表しているからであるが、オルタナティブなボカロ音楽を作るプロデューサーらがhyperpop的な圏域とサウンド的にアティテュード的に接近しているからだ。しかしそのようなボカロPは自らをhyperpop/digicoreアーティストだと言わないだろうし、シーンには見えない断絶があるように思う。

インターネット音楽はなめらかに混ざりつつ、一方でゆるやかに剥離している。そんな様相を一部切り取ることが、野心というほどでもないが自分にやれることのような気がしている。

なお、イベント名の"internethood"は、企画当初からうっすら浮かんでいたものの、なんだか気恥ずかしくて決めかねていたが、今回142clawzとして登場するhirihiriがニート東京にて「地元はSoundCloudTwitterです」と発言していたのに背中を押されたような気がして、決めた。

インターネットに救われた、といってしまうと大げさかもしれないが、でも、中学生の頃の自分にとって、インターネットは教室より風通しがよかったし、地元よりフットだった。無論、居心地のよさは免罪符にならないが(モラルとか、モラルとか…)、このピュアなバイブスが今回のイベントに現れることを祈る。

ともあれ、"internethood"に乞うご期待。

 

チケット買って!!!!

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たかやん考:ネットラッパーの揺曳する身体と「病み」の美学、そして「エンパワメント」

「海外で人気な日本の◯◯」というワードが、今日もネットやテレビで飛び交う。俗に"国民性"と信じられた固有性が国境を越え、新たな価値を発揮する……そんな文化の越境性は、純粋に好奇心を刺激するトピックの一つである。

では、海外で人気な日本のアーティスト「たかやん」についてご存知だろうか?

たかやんはSpotify Japanが発表した「2021年 海外で最も再生された日本のアーティスト」ベスト10にランクインし、YouTubeでは170万人の登録者を抱える人気アーティストだ。

TOKION:『2021年のSpotifyのデータから読み解く「日本の音楽シーン」と「海外で聴かれる日本の音楽」』より https://tokion.jp/2022/04/04/japanese-music-scene-to-be-read-from-2021-spotify-data/

たかやんを知らない人のためにも一曲紹介しよう。YouTubeで1300万回再生された、彼の代表曲のひとつだ。

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……海外で人気と述べたばかりで混乱したかもしれない。たかやんの書く歌詞のほとんどは日本語である。その上、「勝たんしか症候群」、「すきぴあでぃくしょん」、「チョロい」など、日本の若者世代のジャーゴンを多用した、翻訳してもニュアンスの伝わりづらい歌詞なのである。

ではどうして、海外からのリスナーを集めたのか? その謎を解くべくこの原稿に取り組んだわけであるが、その前に、たかやんをとりまく状況を整理しよう。

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まず、上のランキングが示すとおり、グローバルに聴かれる国内音楽の首位は、そのほとんどをアニメーション作品などのタイアップ・ソング/アーティストが占めているが、たかやんの場合、過去に一度もタイアップを経験していない*1

現代、他メディアとのシナジーを利用することなく大勢の海外ファンを獲得することは至難だといっていい。過去5年分の同ランキングに目を通しても、一組*2を除いた全てのアーティストがタイアップ・ソングをきっかけに海外のファンを獲得しているのだ。

しかし、たかやんは事情が異なる。2015年にカバー楽曲を中心に投稿するネットラッパーとして登場し、いってみれば無数の競合に満ちたレッドオーシャンから、日本語楽曲を大量に投稿し続けることで現在の地位を勝ち取ったのである。本人の言及がない以上詮索には限界があるものの、膨大な投稿数を鑑みるに、"狙いすまして"というより"当たるまで"バットを振り続けた結果なのだろうと推測できる。

さらに驚くことに、たかやんにはWikipediaのページが作られていないのである(追記:2022年11月21日に開設されてました*3。第三者による評文を探せば「出身校は?年収は?彼女は?」といった情報ブログが出てくるばかりで、少なからず本稿を書いている2022年11月時点では、批評にしろ評論にしろ、まとまったテキストが一つも存在していない*4。ジャーナリストも批評家も、たかやんの人気に全く意に介さないのは、一体何故なのだろうか?

以上の状況から指摘できるのは、こうである──たかやんはドメスティックな音楽輸出構造の外部で、批評も評論も要求しない、自足したグローバルなファンダムを築き上げている

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たかやんにはある種の"語りづらさ"がある。「ネットラップ」という雑食的文化圏から登場したジャンルレスな態度、また「オタク」の固有性がコモディティ化した現代のオタク的表象……こうした2020年代のインターネット表象文化の系譜を特定する作業には、常に困難がつきまとう。それに、もしアーティストもファンダムも文化的連続性を要請していないのだとしたら、言論はそもそも必要とすらされないのかもしれない*5

さらにいえば、ファンダムと呼ぶべきものがどれだけ確かな輪郭を持っているかも不明である。SpotifyYouTubeアルゴリズムブラックボックスを漂いながらファンを獲得するネットシーンのアーティストにとって、現場は常に不在だ。議論を先取りすると、たかやんは「歌い手」シーンを揺りかごに誕生しているが、コミュニティの紐帯と無関係な力学により成長したアーティストだろうと推測している。

そのため本稿では、たかやんの日本語ラップシーンにおける位置関係でもなく、特定のネットシーンの進化史でもなく、あくまでたかやんのパフォーマンス──ここではその身体性に着目する──を手がかりに、一体どのような人々が「エンパワメント」されているのか、というテーマについて検討していく。

そう、たかやんは明確に「誰か」をエンパワメントしている──「誰か」が「かわいい」と肯定されることを求め、「誰か」が「生きていい」と背中を押されることを願っている。そんな現代の様相を写し取ることが本稿の目的だ。たかやんが海外からのリスナーを集めた所以についても可能な限り推察するが、それが本懐でないことはあらかじめ示しておこう。

さて、前置きが長くなってしまった。これから、たかやんが主戦場とする動画サイトを舞台にキャリアを追っていき、現代のポップ・アイコンとしてのたかやんを検討する。

多少迂遠な論となるかもしれないが、お付き合いいただきたい。

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2015~2019 ネットラップと依代

「カバーから始まりましたね、自分の音楽っていうのは」ニートtokyoのインタビュー動画で語るように、たかやんが初めて楽曲を公開したのはアニメ『銀魂゜』のオープニングテーマのカバーだった。2015年当時、たかやんはまだ高校生である。

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活動初期には「カゲロウデイズ」や「夜明けと蛍 」といったボーカロイドの人気楽曲をカバーしており、いわば、ニコニコ動画「歌い手」と称されるアマチュアシンガーとしての出自を持つことがわかる。

しかしその当初から、単にカバーアーティストとして活動していたのではない。2015年に公開された以下の楽曲は、Snail's House「Ma Chouchoute」を借用し、ピッチアップ処理を施した上で「オリジナル・ラップ」を乗せたものだ。ヒップホップ流に言えば「ビートジャック」の手法を採っているが*6ニコニコ動画の文脈を汲めば、らっぷびとを中心に勃興した「ニコラップ」の影響下にあるといえよう。

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その後も「カバー・ラップバージョン」と「オリジナル楽曲」をハイペースに繰り出していく(7年のキャリアで250本以上の投稿を排出している)。2016年8月にはTwitterのフォロワーが5000人を越え、2018年末頃には各動画が安定して10万回以上再生されるようになった。約3年かけて着実にフォロワーを増やしていった経緯は、膨大な投稿数はもちろん、たしかな歌唱力やユーモアあふれる人柄に支えられていたことは指摘しておきたい。

2019年に入ると「オリジナル楽曲」の比率が高くなり、またスタイルの変容が起こる。ここで取り上げたいのは、300万回近く再生されバイラルヒットした「かれぴころす」だ。

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〈他のクソアマに機種変したって好きだよ?ねえ好きだよ?ねえ〉と一途な愛を吐露する一方で〈は?マ?かれぴころす~〉とアンビバレンスな思いを叫ぶこの楽曲。クラブで出会ったこと、"飽きられた"こと、浮気されたこと……一連のストーリーテリングはひとりの女性のナラティブであり、たかやんはその言を授かる依代に徹している

同時期にリリースした楽曲には「彼女が彼氏を褒める曲」や「全てに嫌気がさしているメンヘラの曲」、「売れないアイドルの曲」などがある*7。全て女性視点に立つ楽曲であるが、これまでの投稿と決定的に異なるのは、歌詞世界に呼応して、たかやんが女装をしている点にあるといえよう。

「女装化」以前の動画を見ると、たかやんが上裸になって筋肉を誇示するような、鍛えられたマッチョ姿、いわば男性性を強調するパフォーマンスが散見される。それはリスナーにとって一種の「ギャグ」として成立していたのだが……こうした身体的パフォーマンスについては後に論じる。ひとまずはキャリアの追跡を続けよう。

2019~2021 折りたたまれた次元とポータル

さて、「かれぴころす」から3ヶ月後、たかやんはさらなる転換を見せる。

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2019年6月に公開した「やすうりうーまん」は、エロ垢、すなわち自らの性的な写真を投稿する女性像を描く。〈体晒す快感 理想の自分と程遠く 寒気と虚無感が残る/もう慣れてきた 注目されて幸せ 今〉と孤独と承認を揺らぎつつ、〈開く、エロ垢 悲しい。〉とメランコリックなトーン。サムネを見て明らかなように、この一人称の語りの話者は、イラストに描かれた女性である

マッチョなたかやん、ないし女装したたかやんは画面上から後退し、イラストに取って代わられたのである。

この転換をもって、「たかやんが歌う物語」は話者を交代し「イラストに描かれた女性の物語」となった。そして、よりフィクショナルな歌詞世界を構築することとなったのである。

ひとりの人物の語りが基調となっている点において、たかやんの方法論は大きく変わっていない。表象が身体かイラストかという点に変化があるが、しかし、以下の画像を見比べてわかる通り、印象は180度変わる。

当時の再生数の上昇を鑑みるに、「イラスト化」が何らかの効果をもたらしたことは間違いない。ともすれば、これが海外ファンと繋がるポータルを開いた第一歩となったのではないだろうか。

ここから以下のような説明を試みたい──「イラスト化」には二重の効能があった。すなわち、身体の棄却による文脈の解体と、ジャパニメーションとの接近だ。

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第一に、身体を棄却し「イラスト化」を果たしてから、たかやんの固有性は声という徴表にのみ限定されており、サムネイルに連なるひとりのシンガー/ラッパーの姿は隠蔽されることとなった。

これにより、シンガー/ラッパーとしての連続性を後退させ(=自ら文脈を解体し)、どの地点からでも参入可能な、個々に独立したフィクション世界群を立ち上げることに成功したのではないか。

この変遷は、筆者が考えるに、アルバムという形式が力を弱め、楽曲という単位に重点が置かれる現代の状況に対応している*8。楽曲がリスナーに届く経緯を考えれば合理的な選択であるはずだ。YouTubeのUI特性では、楽曲のサムネイルとタイトルだけが文脈と切り離された状態で差し出されることで、初めてリスナーの目に届くのである。

たかやんがこの状況に自覚的かどうか定かではないが、楽曲毎に異なる「絵師」を起用し、トーンもタッチも統一されないサムネイル群を容認していることは、連続性のあるポートフォリオよりも楽曲単位の個々のパッケージの完成度を優先している証左だろう。

ともかく、ひとつの楽曲にひとりの人格を吹き込んで歌うたかやんにとって、人格の主体を「イラスト化」したのはごく自然な路線変更であるように思える。しかし画面上で身体を棄却した副作用として、全く独立したキャラクターたちが各々にアルゴリズムに則って分散し、全く独立した物語としてリスナーに受容されるに至ったのではないかと筆者は考える。

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そしてもう一つ、「イラスト化」がもたらした効能は、既に世界的なマーケットに普及する「ジャパニメーション」との接続を可能にしたことである。

たかやんは「イラスト化」以降、楽曲をアニメーションで表現することにも挑戦してきた。1600万回超の再生数を誇る「どうせ無くなるだけ」はショートアニメーション作品でもあるのだ。 

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ここで参照したいのが、たかやんの公式ファンクラブであるDiscordサーバーだ*9。サーバーの公用語が英語となっている通り海外ファンを中心に、"たかやん愛"から日常会話までを包摂するチャットスペースとなっている。

このファンコミュニティのチャンネルのひとつに、参加したユーザーが自己紹介をする「#introduce」がある。2022年10月8日時点で全1995件の紹介文が投稿される中、335件の投稿に「anime」というワードが含まれていた。このアニメ愛好家の割合を指す約17%という数字(紹介文が簡素なユーザーも少なくないため潜在するアニメファンもいるだろう)を有意に高いと捉えるならば、たかやんのファンコミュニティとアニメカルチャーの距離は近い

「どうせなくなるだけ」のほかには、「浮気は犯罪行為」、「玩具」などのアニメーションを用いた楽曲も、再生数が1000万回を超える大ヒット作となっている。もしかすると、日本製ショートアニメを見るような動機でたかやん作品にリーチした人々がいるのかもしれない。

また、英語やスペイン語、韓国語といった諸外国語で書かれたYouTube動画へのコメントを見ていくと、「これを聴いて日本語を勉強している」といった旨のものが散見される。さらに、上のDiscordサーバーにも「#jp-learning-chat」という日本語学習に特化したチャンネルが用意されている。

日経新聞の報道によれば、ジャパニメーションなどのポップカルチャーを日本語学習の入り口とする傾向が近年強まっているという*10。イラストを前景とするたかやん作品が"教材"となっている事実は、それがジャパニメーションと近い位相にあるためではないか。

筆者が指摘したいのは、たかやんの女装からイラストへの転換が、ジャパニメーションを中心とした巨大なネットワークへのアクセスを可能にしたということだ。おそらくはYouTubeアルゴリズムというブラックボックスにより目視できぬ回路が、一人のアマチュアシンガーと巨大市場を結びつけたのだと考えられる。

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以上のように、たかやんの「イラスト化」は二重の効能をもたらした──しかし、先に「ポータルを開いた第一歩」と述べたように、たかやんのキャリアにはさらなる転換が待っている。

2021~ マルチプラットフォームと身体

「イラスト化」以降、たかやんは再生回数100万回以上のヒット作を立て続けに繰り出していく。

しかし2019年から2020年の間、「イラスト化」した楽曲が圧倒的に多いものの、以下の画像のように、本人が登場するケースも少なからず投稿されている。

おそらく、この当時のたかやんはリスナーの反応と対峙しながら様々な実験を行っており、中にはアニメーション作品(「どうせ無くなるだけ」、「浮気は犯罪行為」)や入念に編集された実写ミュージックビデオ(「ヘラってなんぼ!」、「生きる意味なんか知らねえ」)などを展開している。 

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それから2021年2月、筆者が考えるにたかやんのキャリアにおける最も重要な変化が起こる。冒頭に貼った「勝たんしか症候群」を半分以上視聴した読者であれば、既にその変容を目にしているはずである──つまり、たかやんはイラストとフィジカルのハイブリッドとなったのである。

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どういうことか。動画の中間までシークバーを進めると、それまでのイラストが切り替わり、室内で撮影されたたかやんの姿が現れる。多くの場合、実写パートはワンカットで撮影されており、いわば、2019年以前・以降のパフォーマンスが合流したような形であるが、初めて見た人であれば、強烈な違和感を味わうのではないだろうか──たとえば、可愛らしいイラストに惹かれてサムネイルをクリックしたリスナーであればなおのことだ。

「ハイブリッド化」以前/以降の比較(筆者作成)

この変遷を実際的な観点から考察すると、おそらくはTikTokへの目配せがあっただろう。歌詞に対応するボディランゲージ的な振り付けからは、TikTokのダンス動画を触発する意図を汲み取れる。また、実際に「勝たんしか症候群」がコムドットやまとゆら猫といったインフルエンサーに用いられたことを契機に、振り付けが上半身の小ぶりなパントマイムに集中するという、TikTokへの最適化が進行したといえる。

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このように、フィジカル優位なプラットフォームたるTikTokでの新規開拓と、従来的なイラストが既に人気を集めていたこととの折り合いを経て「ハイブリッド化」というパフォーマンスに繋がったのだと推測できるが、もう少し踏み込んで考える必要があるだろう。すなわち、考えるべきは身体の所在についてである

──二次元と三次元をスイッチし、身体の不在と実在を往還する、この運動にこそ、たかやんの表現の核があるからである。

「病み」の美学と身体

あらためてたかやんが取り扱うテーマについて見ていくと、たとえば、セフレに対する独占欲、浮気された怒り、元カレに対する未練……こうした現代の「病み」が中心を占めていることがわかる*11たかやんが示す身体の不在と実在の揺らめきは、「病み」という感性と密接に繋がっている

ここで現代の「病み」を詳述すべく、歌舞伎町の若年層を中心に流行する「地雷系」というファッションスタイルを参照する。なお、地雷系表象はたかやんも頻用するところであり、「勝たんしか症候群」のイラスト然り、本人もそのファッションで歌うことがある。

地雷系とは一体なにか。『歌舞伎町新聞』による「2021 歌舞伎町流行語大賞」という記事から引用すると、「地雷系ファッションや、地雷系メイクと言われるものに身を包」み、「泣きはらしたような赤い目元や血色感の無い肌、真っ赤なリップなど、病弱さを演出し、病み感を出すのが特徴」なのだという。

歌舞伎町をフィールドワークする『「ぴえん」という病』(佐々木チワワ)から引けば、彼女らは、市販薬のオーバードーズリストカット、酒、煙草までファッションの一部として消費し、"あえて"不健康を志していることが記されている。

この「病み=かわいい」という等式が成立した地雷系ファッションは、歌舞伎町に限らず地方のコンカフェなどにも波及しており、土着的な文化というよりはインターネットを通じた地域横断的な事象として現れている。たかやんが歌うように〈めんへら じたい じっさいふぁっしょん〉*12であり、その射程の広大さは確認しておく必要がある。

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ともあれ、健康的な身体の"否定"を美意識に転換しているのが地雷系なのだといえよう。美を死に照射し、その影を生として受け入れる──このようなロジックはゴシック・カルチャーにも見られるが*13、地雷系がパンデミック以降に流行したことを鑑みても、ある種、比較的カジュアルに、不安に覆われた社会をそのまま環境因子としてビルドインしたスタイルなのだと考えられる

また、こと若年層のリアリティに即してピンポイントに指摘するならば、現代の過剰なルッキズムに対する忌避反応として、身体への不信が現れているのではないかと筆者は考えている。2022年の流行語大賞には「ルッキズム」がノミネートされているが、その問題はこれまでになく深刻化している。たかやん作品においても美醜の問題は度々言及される重要なトピックでもあるのだ。

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退廃的な現実認識による生への違和感、あるいはルッキズムに拘束された身体への不信──それが地雷系という「病み」を埋め込んだファッションスタイルに結実している。身体への諦念を反転的に美意識へと向かわせるような力場が、ここに見られるのである*14

さらに、身体の否定を根拠とする「病み」の美学は、二次元という非実在空間によって育まれてきたことも指摘したい。SNSを主戦場とするイラストレーターによって生成され、「#病み」や「#メンヘラ」などとタグ付けされる「病み」を主題とした二次元表象は、地雷系の伏流にも認められるだろう*15

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このように考えると、たかやんのキャリアにおける「イラスト化」は、地雷系を代表とする「病み」カルチャーの美学と紐付いていた──身体への不信、あるいは二次元表象の羨望*16「アンチ・フィジカル」ともいうべき感性として顕現し*17、たかやんの示す次元の揺動と一致するのである。

そして、身体の不在と実在の断崖に立った上で、否定と肯定の両極をゆらぐ「アンチ・フィジカル」の感性を十分に汲んだ上で、たかやんは、筆者の見る限り、特に「ハイブリッド化」以降、身体の肯定を強く示すようになった──ということを予告して、本稿は終盤へと向かう。

侵入する〈僕〉とエンパワメント

2019年以降の「イラスト化」期のたかやんの楽曲を見れば、「死にたいより消えたい人の曲」や「どうせ無くなるだけ」、「全部くだらねえ。」といった楽曲で、身体の否定を訴える作品を作ってきたことがわかる。

しかし一方で、「ハイブリッド化」以降、〈君はずっとありのままでさ平気 このままラフに行こうよ〉と歌う「ありのまま」、〈僕らなりの世界へ行こう 生きてくれてありがとう〉と歌う「大丈夫」……など、たかやんは、実在する身体を、人生を、直截に称揚する歌を歌ってきた。

ほかにも「全部が嫌いだ」や「毎日がゴミすぎてつらい」といったタイトルであっても、〈何故死ぬのに僕らは生きるのだろう?(略)じゃあ後悔の無い物語を。〉〈逃げたいけど見返したいから 歯向かってあたっく!!! ウチらいちばん!!!!!〉と、リリックに込められているのは強烈な生への志向なのだ。

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──気づいただろうか、ここに引用した歌詞には〈君〉や〈僕〉、〈ウチら〉が登場している。大まかな傾向として「イラスト化」期のたかやんは女性の独白を代行する依代として歌ってきたが、「ハイブリッド化」を経て、〈僕〉という、たかやん本人以外に代替されない一人称が頻繁に現れていることを見過ごしてはならない。

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ここでたかやんの表現上のパーソナリティの変遷を辿るべく、本稿で据え置いていた議論を呼び出そう。たかやんは2019年以前、男性性を強調するようなパフォーマンスを行っていた事実がある。筆者はそれを「ある種のギャグ」として成立していたと指摘したが、もう少し詳しく説明したい。

たかやんは2016年時点で「18歳 童貞彼女無歴=年齢」と自称していたように、恋愛市場における"弱者性"を自嘲的にあらわしていた。以下の動画では、いかにも"恋愛強者的"な楽曲である「甘えちゃってSorry」を「非リアバージョン」としてカバーしているが、これは童貞という属性を代表して恋愛そのものをカリカチュアライズする意図があったのだといえよう。

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こうして非リア像とマッチョ姿を並列して披露していたたかやんは、男性性の在り方について、倒錯的なパフォーマンスを行っていた。ある種、双極的にデフォルメされた男性性は、少なからずリスナーにとってはパロディ的なものであり、その落とし所が「笑い」にあったのだといえる。

それから女装姿に転向した当初、「笑われることに譲歩する」危うさが依然として存在していたように筆者には感じられる*18。しかしここまで見てきたように、たかやんは「女装化」あるいは「イラスト化」以降、女性の等身大な「病み」を表現し続けてきた。このように変遷を追えば、たかやんは創作活動において、"弱者"としての男性性と"マッチョ"な男性性、さらに"病んだ"女性性という錯綜したパーソナリティを表象してきたことがわかるはずだ。

さらに「ハイブリッド化」以降、パーソナリティの錯綜は歌詞世界にまで侵食していることは既に述べた通りだ。イラストに描かれるのが女性であるのに反し、〈僕〉という人物が登場し、〈君〉や〈貴方〉に向けて歌われる──下の楽曲を例にすれば、タイトルの「全部が嫌いだ」と訴える話者はイラストの女性、あるいは同様の悩みを抱えたリスナーであり、その対象に向けて〈僕〉(=たかやん)がエールを送っている。

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映像表現においても、女装姿に並んでラフなTシャツ姿やジャージ姿──そのままのたかやん──が同一の動画内に登場することがある。以下の2分17秒以降では、セーラー服、地雷系ファッションといった女装と"そのままのたかやん"が、あたかも等価のものとして現れているのだ。

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注意せねばならないのは、「イラスト化」期にも〈僕〉が現れることがあり、「ハイブリット化」期にも女性の一人称として歌うことがあるという事実だ。しかし重要なのは、「ハイブリッド化」という新たなフォーマットを手に入れたことで、錯綜をそのままに、たかやん作品というオムニバスに実体のある〈僕〉を導入できたことである。

実体のある〈僕〉とは、2015年より創作活を続けてきたたかやんであり、「病み」の人格を数百と口寄せしてきたたかやんである。したがってそれは、少なからず歌詞世界においては、"非モテ"の男性性だけでなく、浮気をされ*19セフレに焦がれ*20陰キャでも恋をして*21同性を愛して*22好きな人に傷つけられ*23リスカをし*24エロ垢で自尊心を傷つけ*25虐待を受け*26整形に溺れ*27推しに溺れ*28二次元に溺れ*29生理痛にボコされ*30鬱っぽくて*31人生に呆れていて*32全部くだらねえと思っていて*33生きる意味も分からなくて*34病んだ女性性*35を包括する、パラレルな人格を飲み込んだ〈僕〉なのである

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ところで、本稿の導入で提示したテーマを覚えているだろうか? それは一体どのような人々が「エンパワメント」されているのか、という問いである。

ニートtokyoのショートインタビューを紹介しよう。「一番の善行を教えてください」という質問に対したかやんは、「音楽活動を始めて、DMがちょくちょく来るんですよ。その時に、『たかやんさんの音楽に救われました』とか、『たかやんさんのおかげで自殺を止めました』とか、(略)そういうDMを見た時は音楽やっててよかったなって思う」と語っている。

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たかやんはキャリア初期からも「誰か」を奮い立たせようとするリリックを書いてきた。既に紹介した「一歩踏み出そうよって曲。」や下の「できる」という曲は、たかやんが高校生の時に投稿したものだ。

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しかし、たかやんが実効性をもって「誰か」をエンパワメントするに至ったのは、自らの身体を不在と実在の間で揺曳させることでしか描けなかった人々(=アンチ・フィジカル)を表現し、その上で総決算としての〈僕〉を作品世界に導入できたからである。

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たかやんの動画につけられた外国語のコメント*36には、「病み」の描写を指して「リアリスティックだ」という賞賛の声がある。「推しへのガチ恋」や「パパ活」、「リストカット」といったモチーフは日本にローカルなものだと筆者は考えていたが、その限りではないようなのだ──どうやら「病み」の射程は、不幸なまでに広大らしい。

ともすれば、歌舞伎町の、あるいは日本の、あるいは海を超えた先の「病んだ誰か」が〈僕〉に出会うことができたというのは、幸運といわざるを得ないだろう。(了)

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*1:メジャーデビューをしていないことでほぼ説明できるが、たかやんの場合は堂村璃羽とのユニット「STUPID GUYS」がユニバーサルミュージックよりデビューしている。しかし、たかやんがユニットを結成する以前より人気を集めていたこと、またユニットによる恩恵では説明しきれない人気を誇ることから、本稿ではソロ活動に主眼を置いて説明していく。

*2:2017年のAmPmのみであるが、AmPmの場合、全編を英詩にし「Spotifyのバイラルチャートの仕組みをハックした」と本人らが語るように、緻密なデジタルマーケティングの賜物として、"異色の新人"としてのデビューの場を自ら準備することに成功している。

*3:ランキングの他9組はもれなく用意されており、たかやんはニコニコ大百科すらも登録されていない。例外的にFandomによる英語記事が存在する。 https://jpop.fandom.com/wiki/Takayan

*4:「ネットカルチャー発」が喧伝されながらYOASOBIやヨルシカなどのアーティストが取り上げられるのは、メジャーレーベルに所属しているからにほかならない。

*5:だからブログに書きました。

*6:たかやん作品において、ヒップホップのカルチャーを踏襲する手法は随所に見られる。たとえばサンプリングは頻繁に行って"いた"のだが、「手首からマンゴー」で『ゼルダの伝説』よりナビィの声をサンプルに使用したところ、とある暴露系YouTuberに告発され炎上し、削除に至った過去がある。2021年頃に複数の動画が削除されたが、これはサンプルスニッチング予防のためだと思われる。なお、ナビィのボイスサンプルはいわゆる"定番ネタ"であり、筆者も頻繁に耳にする音源である。もう一つ、たかやんの使うヒップホップ的手法として「タイプビート」の利用がある。1000万回以上再生された楽曲の中でもKhalidやJoji、XXXTENTACION、Tyga、Justin Bieberといった著名アーティストを模したタイプビートが挙がる。これらの出典元はたかやん作品の動画投稿コメントに明記されている。

*7:このような「◯◯の曲」という構文はSNS以降に頻用され、音楽でいえば、りりあ「浮気されたけどまだ好きって曲」のバイラルヒットが記憶に新しい。また、Twitterで「#漫画が読めるハッシュタグ」と検索すれば、同様の構文、あるいは変形型が数多く見られるだろう。この構文は、いわばモジュール化された人格を呼び出すプログラムであり、起承転結の「承」に焦点をあてる逆算的な描写が求められるのだと、筆者は考えている。そのような意味ではラノベのタイトルが長文化している傾向なども同時代的な現象として捉えられる。

*8:fnmnl「25歳以下の音楽ファンの内15%がアルバムを通して聴いたことがない」とする調査結果が発表」https://fnmnl.tv/2019/10/08/82542

*9:アーティストがDiscordサーバーを用意してファンの交流の場とするケースは現代多く見られる。この現況については筆者がKAI-YOU Premiumに連載する「#虫の目で見るインターネット(or Discord)」を参照していただきたい。 https://premium.kai-you.net/article/531

なお、たかやんの場合、動画の投稿コメントにサーバーのURLが掲載されている。

*10:日本経済新聞「海外で日本語熱 アニメ通じ関心、1500万人がアプリ学習」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA078M30X00C22A2000000/

*11:YouTubeの再生数上位楽曲から数曲、筆者がテーマを抽出した

*12:『「ぴえん」という病』より引用すると、「ぴえんカルチャーにはいわゆる「ファッションメンヘラ」的要素が多く内包されており、病んでいるわけでなくても病んでる様子を演出することで、副次的に何かを得ているケースが多い。病んでいる自分がかわいいや、病んでいる人たち同士のコミュニティに入りたいといった目的のために「ぴえん要素」を利用していたりするのだ。」とある。なお、本著の「ぴえん」は地雷系を内包する語として用いられている

*13:『ゴシック・カルチャー入門』(後藤護)http://www.ele-king.net/books/007236/

*14:第59回文藝賞受賞作『ビューティフルからビューティフルへ』(日比野コレコ)は、死を「ビューティフル」に見据えることで生すらも「ビューティフル」に捉えなおすという、希死念慮を美学に転換する描写がみられる。11月17日に単行本発売とのことだが、本稿をここまで読んだ方にならきっとおすすめできる作品である。筆者はめちゃくちゃ好きな作品だった。

*15:『歌舞伎町新聞』ではアイドルのあのちゃんを、佐々木チワワは漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の登場人物・ゆあてゃを地雷系の伏流に認めている。『明日、私は誰かのカノジョ』はたかやん作品とも非常に親和性が高く、整形女子の彩のテーマソングとして「結局は顔が全てなんだよ。」をあてたい。これは"お気持ち"だが、同作のドラマ化に際してたかやんが起用されなかったことは筆者にとって非常に不服である。ともあれ、二次元と三次元が混濁した文化的水脈を持つことは注目に値する。付け加えると、コスプレ文化と明確に異なるのは、コスプレが"ハレ"的な衣装であり、地雷系が"ケ"的な日常衣である点にある。田中東子『メディア文化とジェンダー政治学―第三波フェミニズムの視点から』では詳しいカルチュアル・スタディーズの記録が書かれているが、「手作業」が尊ばれる、ある種、"大人の趣味"としての醍醐味があるのだろう。また、決定的に異なるのは模倣されるキャラクターの有無だろう。

*16:たとえば「アニメ顔」は賛辞として用いられる。https://www.tiktok.com/@unkomorasunayo/video/7099060865630047490

*17:この語は鮎川ぱて『東京大学ボーカロイド音楽論」講義』より借用している。鮎川はジュディス・バトラーを引用しつつ、象徴界により意味づけられる身体──社会的に構築される身体──と所与の肉体との不和を「アンチ・フィジカル」として示している。なお、本稿を書くのに同書は大変参考にした。「2020年代の新たな共通教養」を謳う同書とたかやんの実践は同時代的に共鳴しているように思える。

*18:鮎川ぱては「少なくとも、笑われることに譲歩している」として女装家プロレスラーのレディビアードを批判しているが、それと同質のものを感じざるを得ない。

*19:https://www.youtube.com/watch?v=47OC5rFeXGs

*20:https://www.youtube.com/watch?v=v4WsQsRgbls

*21:https://www.youtube.com/watch?v=RgjUi098tQ4

*22:https://www.youtube.com/watch?v=aOftVwJLPb8

*23:https://www.youtube.com/watch?v=B-YO3BR001A

*24:https://www.youtube.com/watch?v=SqPNGw13frk

*25:https://www.youtube.com/watch?v=tDkckJPnprc

*26:https://www.youtube.com/watch?v=fRrZ2Nr-KKQ

*27:https://www.youtube.com/watch?v=zdaUhZvZ3-I

*28:https://www.youtube.com/watch?v=2j0sgTtXBQA

*29:https://www.youtube.com/watch?v=w5hAU-p-hv4

*30:https://www.youtube.com/watch?v=NkFH0F_dpa8

*31:https://www.youtube.com/watch?v=2GlRd3i6L4M

*32:https://www.youtube.com/watch?v=6tJ_vEqyXTQ

*33:https://www.youtube.com/watch?v=5TDhJ_KikbQ

*34:https://www.youtube.com/watch?v=bGDQQnBVUsk

*35:必ずしも異性愛だけがテーマであるわけではなく、直截に同性愛を歌う曲も少ないながらあることは重ねて指摘しておきたい。

*36:筆者が確認できるだけで、英語、スペイン語ポルトガル語、中国語、韓国語、フランス語、ロシア語などがある。

Redditに本人降臨したMura Masaの発言まとめ(和訳)

Mura MasaRedditに降臨してファンからの質問およそ50個に回答していたので全訳しました。10000字くらいあります。新譜『Damon Time』を聞きながらどうぞ。

open.spotify.com

前置き

FUJIROCKで来日したMura Masaのインタビューを予定していた方が急病にかかり、突如代打が回ってきたので下の記事の取材・構成を担当することになった。ム……ムラ?ム、ムマ、マメッ!?(驚きと慄き)

そんなこんなで取材1時間半前に原宿に到着して、ゆーて暇なので無意味に竹下通りを往復しては汗だくになってから現場に臨むと、氏は終始穏やかな笑顔で対応してくれたし、5分もすれば緊張は解けていたように思う。さすがにソニックのポーズを真似してくれた時は和んだ(fnmnl記事参照)。

さて本題であるが、その後原稿の構成をしながらMura Masaについて調べていたところ、どうやら2021年の12月頃、英語圏掲示板サイト「Reddit」に本人が降臨していたのだと知った。タイミングとしては「2gether」のリリースから約1ヶ月、アルバムのリリースに向けて準備を整えている段階だろう。日本語圏(というか自分のいる界隈)ではほとんど話題にならなかったように思う。

www.reddit.com

覗いてみると「やあ、Mura Masaa.k.a.xander)です(▰˘◡˘▰) 。質問ある?」という陽気なタイトルで始まり、その後なが〜いスレッドでファンからの大量の質問が寄せられている。無論全てに答えているわけではないが、質問の内容は制作の具体的な手法やおすすめのプラグイン、香水、ファッションブランド……などなど多岐にわたる。中にはクリティカルな質問もあり、「それはおれが聞きたかった!」と悔しく思うものもある。

まあ、本来なら取材前にこのポストをチェックしていて然るべきなんだが、先述の事情で時間的猶予がなかったので……という言い訳がましい職業倫理的懺悔を供養するべく、Mura Masaが回答した質問とその発言を和訳し、ここに掲載しようと思う。

ネットの野良インタビュアーの鋭く無節操な質問に、ミームを貼りつつユーモラスな語り口で応答するMura Masaそのシチュエーションだけで十分面白いが、内容そのものも非常に興味深いものになっている。

本稿はRedditで時系列順にソートしたものをほどほどに訳したのみである。ブログの末尾に索引として目次を付けたので活用してほしい(本当はカテゴリ分けなどできればよかったが、骨が折れるのでやめた)。

※なお当記事は個人的な活動ですので、もし何か問題があればnamahogeまでTwitterのDMかメールでご連絡ください。

******

ちなみにMura Masaプロフィール画像カウボーイビバップのキャプチャーを使っている。なぜこのシーン?

訳文

やあ、Mura Masaa.k.a.xander)です(▰˘◡˘▰) 。質問ある?

やあMuraだよ(これはできたてホヤホヤの捨て垢)。ほんとだよ。*1

ちょうどリリースしたばかりのニューシングル「2gether」はこちらからどうぞ。

muramasa.lnk.to

なんでも聞いていいよ。音楽、古い音楽、新しい音楽、生活、憂鬱になること、変な本、香水、服。

ベストクエスチョンはインスタに掲載するよ |:">

Q&A

調子はどう?

Mura:正直、超高まってるよ

「Jesuschrist」ってプロデューサータグはなんなの?*2

Mura:ヤバい音楽を聴くといつも口に出してしまうので、デカくて汚いタグという形で不滅の存在にしたよ。毎回笑わせてくれるんだ。

どうしてPinkPantheressとコラボしたの?

Mura:彼女は小さな天才で、素晴らしいソングライターでリリシストだよね。多くの人にとってもそうだろうと確信しているけど、ぼくにとって創造的なミューズなんだ。ほかにもいろいろやってるから早くリリースしたいね。

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ほかのコラボについても教えてよ

Mura:https://www.youtube.com/watch?v=IuRC3HEJ71M

www.youtube.com
*3

お気に入りのシンセは?

Mura:デイブ・スミスのProphet 5*4

サウンドや楽器の選択はどのように行っている?作曲のプロセスの中で選択するのか、それとも決まったアイデアを実行しているのか。

Mura:これはいい質問で、たぶん、ぼくが制作全般で気に入っていることになっているよ。思うに、キュレーター的な思考は非常に重要で。エレクトロニック・ミュージックでできることってたくさんあるけれど、サウンドの美学に注目することこそが重要なんだ。

この考えを説明する方法はいろいろあるけど、よく頭に浮かぶいくつかの重要なことは次のとおり。

  •  アクースマティックな音と非アクースマティックな音を理解し、並置すること*5。僕の音楽の特徴の1つは、現実の音と合成音を並置することで生々しい感覚を得られることだと思う。ある音はリアルで馴染みがあって、ある音は正体不明であるという感覚が僕は好きなんだ。
  • 次のアルバムでは新たな試みとして、事前にサウンドのパレットを作成している。この美学に落ち着いてからホントに楽しくなっちゃって、ドラム、シンセプリセット、サンプルのフォルダーを作るのに多くの時間を費やしたんだ。基本的には画家がキャンバスに向きあう前にいくつもの色を混ぜ合わせるようなもの。これはすごく実用的な方法で、たとえば、制作中にクラップ音が必要になっても、既に5~6個のサンプルに限られている──このアルバムのために選んだものがね。間違いなくサウンドに集中するのに役立つよ。それに3000個のキック一覧をフリックする必要がないから制作のプロセスが高速化されるし、プロセスの中でもクリエイティブな部分に取り掛かることができるよ、haha
  •  正直、たくさんの新しい音楽を聴くことが審美眼を鍛えるのに役立つと思う。自分が関わるところの範囲を広げていけば、どんなもののどんなところが好きなのか分かるし、そのピースを作品に取り入れることができるんだ。

<3

人に見つからなかった名サンプルを教えてよ

Mura:https://www.youtube.com/watch?v=IuRC3HEJ71M

www.youtube.com

『Soundtrack To A Death』以来のファンだよ。一体どうやって「…Girl」を作ったんだ? マスターピース!!!

Mura:カレッジの寮のベッドルームにある小さなMIDIピアノで作ったんだと思う。あと、Evil Needleのドラムのサンプルもたくさん使ったと思う、haha

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Slowthaiとまた一緒に仕事をする予定は?

Mura:ホントにちょうどfacetimeが来たところだったんだよ、後でかけ直さないとね、ハハ。ハードディスクにはとんでもない量のMuraThai(原文ママ)があるし、時期がくれば日の目を見るんじゃないかな。

今まで作った曲の中で一番好きな曲、好きな街はどこですか?

Mura:制作が楽しかった曲:シングルプラグのように聞こえるけど(?)、「2gether」を作るのが本当に好きだったね。好きな都市はいつもロンドンだけど、バルセロナのPrimaveraは最高だったよ。あのフェスをみんなに推したいね。

次のプロジェクトに期待できることって何?

Mura:たくさんの楽しみ、たくさんの仕掛け、たくさんのデーモン・エネルギーがあるよ

やあ、どんな靴を履いてるの?

Mura:ボッテガの白いラバースリッパ

先生、こんばんは。何のコロンを買えばいいですか?

Mura:Gabar no.II , 19-69 Chronic, Tom Ford Tuscan Leather.

WFGの商品デザインをまたやってくれますか?*6

Mura:WFGはToothgrinder Pressのために多くのシックな仕事をやってるよ。彼はStone Islandでも働いているので、もし新しいStoneyをチェックしているならば、WFGを履くことになるよ!

ベスト・ギルティプレジャー映画を教えてよ

Mura:別にギルティじゃないけど、ついつい「パイレーツ・オブ・カリビアン」の2作目に手を出してしまうね

お気に入りの音楽プロデューサーは誰ですか? また一番よく使うプラグインは何ですか?

Mura:僕が好きなのは、Elysia Crampton、KAVARI、Evil Gianne、Oli XL。挙げればきりがないけどね。一番使ってるプラグインはぶっちゃけEchoboy ;]

あなたはホントに多才な人だけど、作曲、プロデュース、ミキシング、マスタリング、アートワークのデザイン、そしてライブの準備など、どのように進めているのでしょうか? どの程度自分でOKを出して、どのタイミングで仕事を任せるのでしょう?

Mura:そうそう、全部を自分でやっちゃうと頭痛がするんだよ、ハハ。でもすべての仕事に作家的な仕上がりを求めているなら、代償として払う必要のあるものなんだ。誰かに任せるのはいいことだしぼくはそれをより良くしたいから、人がプロジェクトに何をもたらしてくれるか見極めて、その人のセンスと実行力を信じるっていうことを主にしている。適材適所ってやつだね

Alex Gと一緒に曲を作らない?

Mura:それは最高すぎ

今日の朝食は?

Mura:big coffee

「2gether」のボーカルって誰?

Mura:Gretel Hänlyn。彼はヤバいよ

グラミー賞に行った感想は?

Mura:グラミーは楽しかったな。スーツを着るのも好きなんだ

最近、信じられないほど嬉しかったことは何ですか?

Mura:これは老人のたわごとじゃが、最近買った新しいランプが見るたびに笑顔になれるんじゃ。Tobia ScarpaのFantasmaというやつじゃ。

サンプルパックを使用することと、自分でサンプルをデザインすることのどっちが多い? あと、ラップトップを使ってたと思うけど、最近ハードウェアに興味ある?

Mura:どっちもかな。 簡単に言うと、ドラムはサンプルパックがほとんどで、メロディーやベース用に自作のサンプル、それにテクスチャー用に両方をミックスしたものがあるよ。

基本的にはまだラップトップを使ってるけど、最近はKorgのDFAMで遊んでるよ。でも、時間がたっぷり取れるようになるまではモジュラー生活を本格的に始める気はないんだ。だから今の僕にはセミモジュラーが合ってるね。

『Soundtrack to a death』の頃からのファンさ。プロデューサーとしてキャリアを始めたばかりの人になにかアドバイスはあるかい?

Mura:本当に好きなものを作って出せばいい。それがすべての人の原点だし、一流と呼ばれる人たちが常に目指しているところなんだ。

コーチェラ出るよね?

Mura:https://www.youtube.com/watch?v=IuRC3HEJ71M 

www.youtube.com

あなたの制作過程で最も型破りな工程は?

Mura:よく変だと言われるのは、ミキシングやトラックレイアウトの方法だね。たとえば、ぼくの曲は最大でも20トラックくらいしかない。100トラック以上ある人の話を聞くとぞっとするよね。ミニマリズム!少ないもので多くを行い、曲のためにならないものは取り除く。

音楽を作る気が起きない時、また何かを作らなければならないという罪悪感がある時、アウトプットがあまりに酷い時って、どうしたらいいのでしょう。私は、自分の音楽的スキルが低すぎるかもしれんとか、あらゆる不安を抱えているんだ

Mura:正直超わかるよ。ぼくも6ヶ月ほど音楽を作る気すら起きない時期があるんだ(だからアルバムを作るのにいつも2,3年かかっちゃうのさ、haha)

僕にとって本当に役に立ったことの一つは、純粋に、正真正銘に、音楽から離れるということ。音楽を聴かない、作らないことで、「なにか素晴らしいものを作らなきゃ」っていうプレッシャーから解放されて一息つけるよ。するといつの間にか、本当に感動的な何かを聞いて、そして正しい動機からリスタートできると思うよ──つまり義務感じゃなくて、楽しさとスリルのためにね。

だから、自分に甘くしちゃおう。いいものっていうのはリラックスしてる時に生まれるもので、「生産性=good」っていう神話はぜんぜん変な話。

「Lotus Eater」がこれほどまでに人気になるとはリリースした頃には想像もつかなかったんじゃないですか? この曲って定期的にフェスやライブでやってるのを聞く気がするよ。

Mura:一切想像もしなかったよ。フルートを使ったヒップホップ・スタイルの音楽ってあんまなかったからやってみようと。けどもはやユビキタスになってるから、今となってはバカみたいな話さ、ハハ。この曲に対するみんなのリアクションが好きなんだよね。

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最近の生活はどう? 創作活動に役立つような特筆すべきことがあれば教えてよ。あと精神的に助けになったことも。あと……いつか「Was It Worth It?」をリリースしてほしいんだ。何年経っても心に響いているよ:)

Mura:ここ数年はとても不安になって、何かを変えなきゃと決意したんだ。認知行動療法のセラピーを受けることから始めて、その後は一つずつ精神的に楽になるようなことをやっていった。

睡眠を改善して(これはマジ重要)、食事量を少し増やして定期的に食べたり、運動を始めたり(実際、運動って脳の化学的性質を変化させるからヤバいよ)、もっと友達と連絡を取ったり、もっと定期的に他の人と過ごしたり。 

でも正直なところ、まだ精神的に疲れ果てていたから抗うつ剤を服用することにして、人生を大きく変えたんだよ。基本的に僕のすべての決断や行動って、不安によって決定されていたんだ。

これを読んでる人に言いたいんだけど、物事がうまくいかないと感じている場合、手を差し出して、何かしらの変化を起こしてみて。ぼくは人生がこんなに楽しいものだとは思わなかったよ。普通の人がこうやって冷静に歩いているのが不思議なくらい、haha.

P.S.「Was It Worth It」はおそらくリリースされないよ……でもあなたが大好きでいてくれるのは最高だよ

創作の過程について、意識的に新しいサウンドの音楽を作ろうとしているのでしょうか? それとももっと本能的に? 別の言い方をすると、作曲する工程ですぐに新しいサウンドや音の組み合わせを発見しているのか、それとも試行錯誤を繰り返して見つけているのか。私もプロデューサーだから聞いてみたい!

Mura:<3 いい質問です。 

Mura Masaというプロジェクトはおそらく先進的でキュレーター的な音楽だと思う。だからその定義は常に変化していなければならなくて、それは刺激的なうえ困難もある。ふだん、アルバムをリリースした後はなが〜〜〜い時間をかけて──多くの実験を行い、新しいアーティストを聴き、カルチャーやその時々の刺激的で興味深いものに耳を傾け続けることで──次のコンセプトが導き出せるんだ。

けど、そのように自然な流れで何かにたどり着くと、残りのクリエイティブに拍車がかかる。とてもうまく働く。別の回答でも言及したけど、今回は作曲の前にパレットを作っているよ。ヴィジョンに合ったサウンドを手に入れて、作って、収集して、インスピレーションが湧いたときに利用できるすべてのツール/美学を揃えている。アートワークや写真といったビジュアル面でも同じような流れかな。

お気に入りのSpliceのサンプルパックは?

Mura:もちろん、SOPHIEさ*7

[削除された質問]*8

Mura:<3

う〜〜〜〜〜〜ん、実際、僕が使ってるのはAbletonの純正品が多いからがっかりさせちゃう答えになってるかも。

でも最近はArturiaのものをよく使っていて、微調整のできるクラシックなサウンドがすべて揃っているから、買う価値はあるよ。

ナードな質問です。「in my mind」の冒頭の超きれいなイントロってどうなってますか? 特にビットクラッシュになっているところ。微細なことだけど、いろんなエモーションが重なっているみたいだよね! それと、より広範な質問。『R.Y.C』はリリース直後にパンデミックが発生したけど、それはあなたにとって新たな意味を持つようになりましたか? 個人的には、このアルバムのノスタルジーや憂鬱、そして青春というテーマと初期のロックダウンの日々が見事にマッチしていたと思っています。

Mura:ナードな回答:ポール・マッカートニーのベースをサウンドカードに直接ぶっこんで、Guitar Rigでベースアンプを鳴らしているよ。アーティファクトやビットクラッシュは、オーディオを11ビットに変換した時に発生するもので、このヤバいゲートヒスが手に入るんだ。ドラムも最高に楽しいよね。

広範な回答:間違いなく、『R.Y.C.』で遠くまでジャンプしようとしていたけど、まさか狙い通りのとこに行っちゃうとはね……

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Love you.ちょっとディープな話なんだけど。早くから大成功したことで、UKのプロデューサーのコミュニティから疎外されていると感じることはありますか? また自分自身のコレクティブを作ろうとは思いませんか?

Mura:<3 おもしろいね。変な話、僕は自分自身がどのシーンに所属しているかとか考えたことがないんだよ。実際イギリスの出身ってわけでもないしね……

親しい協力者や友人という形で自分自身の集団があることはあるけど、徒党のようなものを正式に作ろうとはあまり考えてないかな。境界線を引きたくないし、適応できる流動性が好きなんだ。

長年のファンだよ👋 歌う/録音する/ミキシングするなどのボーカルに関するtipsはあるかい?(自分はまだ始めたばかりで、正しいサウンドを作るのに行き詰まってるんだ :/ )

Mura:ヘイ、いいマイクとプリアンプに投資するっていうのが主なことかな。その上で、200Hz付近の低域をカットし、高音域を少しブーストして、いいコンプレッサーをかけて、ディレイとリバーブは控えめにすること。

一番いいのは、自分に合った方法論を見つけるまで練習することだよ。あと、賛否両論あるけど、Antaresのオートチューンはすべてのサウンドを最高にしてくれるよ……

「昔のMura Masaみたいな曲を作って」っていうプレッシャーとどう対処しているんだろう?

Mura:これはとてもいい質問。僕はいろんなものを作ってるからね。

古いものを楽しむことはいいことだと思うし、新しいものが自分に合わないと判断するのは構わないけれど、「もっかいやってよ」と言われるのはすごく気持ち悪い。

「ヘイ、8年前と同じ服で、同じ意見で、同じ人と遊べいいじゃないか」って言われるようなことだからね。

それって意味がないし、なんていうか、物事が動いて人が変わるということを軽視しているように思う。古いものが好きな人は大歓迎だけど、それ以上のものを期待するのは負け戦だと思うんだ。自分が興味あること、楽しいと思うこと、繋がりのあることを常にやっていくつもりだよ。

またCharliとコラボすることはある?

Mura:yessssss 数週間前に遊んだばっかだよ

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ドラムの処理でよく使うプラグインはある?

Mura:ないかな……いいサンプルから始めるってことが、この件に関する僕からの一番のアドバイスだよ。いいケーキはいい素材でできている >"<

個人的な感情を曲にするのは精神的に疲れますか、それとも癒しになりますか?

Mura:何をするにしても、自分の経験について書いているように思うよ。だからそれって創造的なプロセスの一部なんだって、僕は考えているよ :}

より早く、より生産的なプロデューサーになる秘訣はありますか? 私はよく、ループにハマって飽きて、アイディアを完成させることができないということがあります。また、プラグインの最終兵器はありますか?

Mura:時間をかけて気に入ったサウンドやサンプルを一箇所に集めて、再利用することを恐れないようにすること。必要になれば後からそれらを交換することだってできるし、インスピレーションを得た瞬間に素材にアクセスできることは、プロセスを素早く回転させることに役立つよ。

それに、アイディアに飽きたらやめればいいんだよ。当然のことだけど、ものづくりって楽しくてエキサイティングなはずなんだ。もし、その感覚を見つけられなければしばらく休んで、新しい音楽を聴いたり、インスピレーションを与えてくれるものを探したりすればいい。僕は去年6ヶ月間音楽を作らなかったけど、純粋に音楽から離れることでいいことがたくさんあったよ。

一番楽しかったプロジェクトについて教えてよ。あなたの作品が大好きで、今でも「No Hope Generation」をいつも聴いてるよ。

Mura:適切な答えじゃないけど、僕はいつも本当にすべての仕事を楽しんでやっているよ。楽しく刺激的な音楽じゃなければやらないし。思うに、これが正気を保って信頼できる作品を作るための秘訣だね。

それと、「No Hope Generation」を愛してくれてありがとう。

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Sam Gellaitryとのコラボキボンヌ

Mura:Sammyは彼自身のエネルギーだけで十分で、僕のことは必要でないんじゃないかな

新しいスタイルやジャンルのプロデュースを始めるときのプロセスはどのようなものですか?  大規模な研究段階を経るか、それとも自分が好きなことにすぐに飛び込むのでしょうか?

Mura:いい質問ですね。僕は、その作品がどこから来て、なぜ存在していて、なぜ素晴らしいのかということを理解できたと確信してはじめて制作に取り組む傾向があるよ。ただの愛好家にならないことが重要だと思うんだ。形式への敬意や本当の関与なしにスタイルからスタイルへと飛び移るだけだと、空虚な作品になっちゃうよね。僕は多くの場合、すでに好きなものや精通しているものに取り組んでいるよ。

あなたのファッションセンスが大好き。ショップやブランドやスポットについて教えて。

Mura:SSENSE、Dover Street Market、APOC、これらは新しいデザイナーの商品と触れることのできるいい場所だよ。もし高いものが難しければ、Grailedがほんとにいいよ。

でもファッションに限らず、地元のアーティストやデザイナーが作ったものを買うことをおすすめするよ。自分の街でクールなものを作っている人を調べて、彼らをサポートしよう!その方が楽しいからね。

あなたの音楽、空間に注意が向いている感じが好きなんだよね。特にヘッドフォンで聴くと、本物の3Dのフィールドが広がっているように感じるんだ。この音空間を実現する方法とは?

Mura:ベーシストだった父から「ベースは弾かないことの方が大事だ」と言われたことがある。

それをずっと覚えていて。なにかが欠けていることと、なにかが存在することの相互作用というのが、僕にとって音楽の最も興味深いことだね。

ワイ香水デビューしたて。今何をゲットすればいい?

Mura:gabar noII , 19-69 Chronic, Comme des Garcon Wonderwood, le Labo

himeraのリミックスで「Roblox」のSE使ったでしょ

Mura:はい

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「Less is more」派?それとも「More is more」派?

Mura:less less less less いっつもless。リダクショニズム

 

追記

Mura:さてみんな、1時間ほどタイピングをして頭おかしくなりそうだしちょうどスペースキーが壊れたところだから、この辺で終わりにするよ。ぼくの答えたいくつかの回答が、答えきれなかった質問のヒントになるといいね。ここにいる皆を心から愛しているし、ホストしてくれた r/electronicmusic に感謝します。新年にはもっと多くの音楽をリリースするよ。皆に聴かせるのが待ちきれないな。

kissessssssssss x

 

******
おわり。野良のインターネッツ・インタビュアーたちすげ〜しMura Masa言語化能力もすげ〜。ユーモアのセンスが素敵。ちなみに僕が一番好きな曲は「What If I Go?(feat. Bonzai)」です。

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最後につくタイプの目次(索引として使って)

*1:Instagramリンクされていたが現在は失効されているので、ストーリーかなにかで投稿していた模様

*2:「2gether」2:28「You Make It Look so Easy (Ruined by Mura) (feat. Petal Supply)」0:45参照

*3:イングランドフットボール監督であるジョゼ・モウリーニョの言。日本で言うところの「これ以上いけない」(孤独のグルメ)的な使われ方をしている

*4:2015年時点で「Prophet8を買って今日は何も食べてない」とツイートしているのが味わい深い。なんせProphet 5は4,500$もするのである

*5:参照

*6:過去に靴のデザインを手掛けているとのこと。詳しくは分からないのでこの辺り訳出が不安

*7:たぶんこれ https://splice.com/sounds/splice/sophie-samples

*8:削除されており回答のみ残っている

namahogeの音楽ライター仕事一覧

namahogeです。

2021年より音楽ライター的なことを始め、ちょうど1年くらい経って記事もたまってきたのでまとめました(随時更新する予定です)。好きな音楽はPerfumeです。好きな横浜中華街は安記です。

【note】パンデミック下に狂い咲く、破壊と越境の音楽「hyperpop」とは何か?

note.com

hyperpopという音楽を聞きまくっていたのと日本語記事が少なかったので書いた。なお、記事内にも追記してあるが、後述のユリイカにて灰街令さんより当記事における「クィア」の"一義的"なジェンダーパフォーマンスについて批判されており、大変もっともであるのでそちらも参照しつつ留意して読んでください。続編にあたる記事はこちら

【Soundmain】エッジーなエレクトロニック・サウンドを求めて【インタビュー連載】

blogs.soundmain.net

blogs.soundmain.net

blogs.soundmain.net

blogs.soundmain.net

blogs.soundmain.net

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ユリイカ2022年4月号】特集*hyperpop

www.seidosha.co.jp

tomadさん、〜離さんとの鼎談企画に参加、海外盤のディスクガイド執筆、trash angelsのインタビューを担当しました。

【fnmnl】ヒップホップ・ユースシーン【インタビュー連載】

fnmnl.tv

fnmnl.tv

fnmnl.tv

fnmnl.tv

【KAI-YOU Premium】虫の目で見るインターネット(or Discord)【コラム連載】

premium.kai-you.net

premium.kai-you.net

premium.kai-you.net

Red Bull】RASENサイファー【インタビュー】

www.redbull.com

www.redbull.com

www.redbull.com

www.redbull.com

www.redbull.com

www.redbull.com

その他コラム

fnmnl.tv

avyss-magazine.com

meetia.net

その他インタビュー

premium.kai-you.net

fnmnl.tv

avyss-magazine.com

**********

 

以上。マメに更新していきます〜。

あと書き起こしの仕事なども高い目標意識とやりがいを持って取り組むのでお声かけください。プレスリリースも是非です。連絡先はTwitter、もしくはメール[namahogeあっとgmail.com]から。

ファストコンテンツとノスタルジー消費──『三体』を例に

※『三体』のネタバレはありません

中国で『三体』のドラマが始まるらしい。去年の夏に完結編の第三部の邦訳版が出たのでそのタイミングで一部から一気読みしたが、外聞どおり超最高のエンタメSF小説で、読んでから数ヶ月は会う人会う人に勧めまくった記憶があるし、十月頃には人生で初めて読書会に参加したくらい、誰かと話したい欲求を駆り立てられていた。なんせ大量の登場人物が出てきてウン万年スケールの話なので「どのキャラが好き?」とか「どのシーンがアツかった?」とかそんな話で盛り上がれるのだ。ちなみに自分はキャラで言うと艾AAか羅輯。好きなシーンは第一部なら陽子の二次元展開(このシーンで決定的にスゲーと思った)で、第二部はルーブル、第三部はゴッホの星月夜がメタファーになるところ。やはりこうやって並べると絵力の強いシーンがいくつもある。

さておき、いまさらファストコンテンツの話題に飛びつくのも時代遅れな感じがするが、YouTubeで「十分でわかる三体Ⅲ」的な中国語の動画を見て(というか、中国版ドラマのティザーを探していたら見つけてしまった)、今までそういう類の動画を見たことがなかったので、なんというか感心してしまった。フリー素材やら完全に違法っぽい映画のカットやらが切り貼りされて、それらは読み上げられるテキストをイメージの側から補完させるような役割を担っている。宇宙船といったらスターウォーズの宇宙船のシーンが、言語の話題なら『メッセージ』の切り抜きが、といった具合でいろんなSF映画剽窃することで成り立っているわけだが、同じアカウントで大量の「ファスト読書」的動画をアップロードしているので、おそらく制作チーム内で、キーワードと紐付いた動画素材がデータベース化されているんじゃないかと思う(何の裏もとってない思い込みです)。一時期動画制作の仕事もやっていた身からするとすげ〜とか感心してしまうのだが、まあ感心することではない。

ところでそれよりも感心したのが、中国語に全く無学の筆者がその動画を二倍速で見ていると、言葉は理解できなくとも、映像素材のパッチワークだけでも作品のストーリーラインが脳内で呼び起こされたことだった。あらすじを知っていれば、エッセンスだけを抽出したファスト読書的動画は、それが異国語で作られていたとしても、ストーリーの追体験を可能にするのである。もちろん感心することではない(大事なことは2回言うタイプ)。ファストコンテンツとか倍速視聴とかの議論では、「分かった気になるという消費体験の是非」みたいなことが俎上に載せられがちな気がするが、「分かっていることを再認識させる消費体験」というのもあるよなー、と。自分はゲームのプレイ動画をよく見るのだが、実況動画とプレイ動画があれば後者を視聴する派であり、昔プレイしたゲームの動画をわざわざ見て「あったね〜」となるのが結構楽しかったりするし、やはり追体験を求めるなら実況者の視点はノイズとなるわけである。「60分で思い出すFF5」みたいな動画もそこそこあるし、ノスタルジー消費的なものとファストコンテンツってほぼ同じ構造になり得るんじゃないかと思った次第である。

それはそうと『三体』はガチ面白いので読むべし。

 

ちなみにこのブログは書式や投稿頻度や口ぶりなど諸々不安定にリキッドにジャジーにバイブスでやっています。いつかしっくり来るなにかを期待して……

「Y2K」と「ゼロ年代」、「ポストヒューマン」と「チート系」

最近考えたこと
  • Y2K」と「ゼロ年代」、「ポストヒューマン」と「チート系」
    舞城王太郎九十九十九』を読んでふと思った。本作の主人公である九十九十九(そもそもは清涼院流水のJDCシリーズの登場人物)は「美しすぎるがゆえ目が合うだけで失神してしまう」、「美しすぎるがゆえ火にあぶられても死なない」といった設定で、人間を超越したポストヒューマンとして描かれている。ゼロ年代の作品だし、これはY2K文脈でよく用いられるポストヒューマン像と関連があるのではないか。が、少し考えてみるとそんなわけはなかった。「Y2K」という言葉が指す範囲はディケード単位のものではなく(定義はまちまちだと思うが、一般には)、90年代末〜00年代初頭ミレニアム前後を指し、iMacはじめゲームボーイやらたまごっちやらのスケルトンな筐体が象徴するような未来志向のニュアンスがある(ニッポンの未来はwow wow wow wow的な期待なのかサイバーパンク的なシニズムなのか曖昧なところではある)。そもそも『九十九十九』は2007年の作品なのでここでいうY2Kとは時代が異なり、テクノロジーの要素もない。Y2Kという流行りのタームに飛びつく前に、(舞城王太郎西尾維新などのメフィスト出身の作家が以前より検討されてきたように)ゼロ年代批評の俎上に乗せるべき対象である。
    →念の為、ここで指す「Y2K」はY2K Aesthetic Institute的なものである。ルーズソックスなどが当てはまるかというとわからないが、そういえば、舞城王太郎作品にはギャル的存在が欠かせないといえる。
    →ここで取り出すべき性質は「超人性」。同じ「超人性」といっても「チート系」と「ポストヒューマン」は異なる。九十九十九はチート系でありポストヒューマンではない。単純化しすぎかもしれないし並べて語るべきか分からないが大まかにいえば、前者は「ゼロ年代」的でメフィスト系〜異世界転生系ラノベにもつながる文脈となっていて、後者は「Y2K」的で国内でいったらで攻殻機動隊のようなハードめなSF作品が代表例となる(たぶん)。あくまで日常から逸脱することがチート系で、非現実な未来的存在となるのがポストヒューマン。「誰も見たことのない景色だけを見る 俺は子供の頃からずっと天才でいる」というTohjiはあくまで現実でのチート性を強調するが、ファッションはY2K。複合型である(いや、Y2Kリバイバルってそういうものかもしれない)。Y2Kに関してさらに複雑にするならばエヴァ最終兵器彼女の「セカイ系」というタームが隣接しているように思えるが(テクノロジー描写を伴う場合に限るが)、ところで、書評家・翻訳家の大森望氏が「SF小説はだいたいセカイ系ですよ」的なことを言っていたのを見てそれはどうなんだと思った事がある。日常との距離、サイエンスな描写の強度、物語構成の焦点などの尺度でこれらのワードが使い分けられているのだろうが、混同してしまうと不適切な文脈に乗ってしまうということを思った次第
  • 「批評」とはなんぞや
    →なんやら最近評論じみた原稿を書くことがあるが、読書といえば8割がた小説しか読まないのでいわゆる「批評」というものを勉強する必要を感じ、図書館でいくつか批評という名のつく書籍を借りてきた。その中の一冊、佐々木敦『批評王』の序文で「私の考える批評とは、単なる分析とも価値判断とも違う。批評対象との遭遇体験がトリガーとなって思考が起動し、文章そのものがそれについて考えるプロセスをトレースするような、言語で構成されたロジックとレトリックの交叉体のことである。」と書かれていた。それから亡くなった大叔母の家から拝借した『林達夫著作集』をいくつか読んで、上のテキストの意味がより理解できた気がする。趣味で行っている園芸という領域から、アマチュアとプロの違い、またアマチュアの存在意義について論じたテキストは他分野でも代入可能な思考となっていた。あと福嶋亮大『百年の批評』で『九十九十九』の言及があり、「これを書くために日本語があったんや」みたいなことが書かれていたのでついでに借りてきたという経緯がある。これまで舞城王太郎積ん読はあるもののなんとなく読んでいなかったので読む機会となってよかった。こうやって誰かの思考・嗜好の幅を広げられるような批評が書けるといいなーと思いつつ、たとえばTwitterのプロフには批評家と書くとしたらどんなタイミングなんだ……わからねえ……と思った(以前Soundmainの編集の方と「インターネット・フィールドワーカーっていう肩書いいじゃないですか」と盛り上がったことがあったが、それもなんか恥ずかしくてできていない)。
  • Rosalíaと元ちとせ
    →ちょっと前だけどRosalíaにドハマりして毎日聴いていた。すごく大雑把にいうとフラメンコに現代ポップスの処理が合わさっているところに新鮮味があるわけだけど、元ちとせ奄美民謡に強めのオートチューンをかけたら近いものになるんじゃないかと思った。『ハイヌミカゼ』の「サンゴ十五夜」などはビート強めなトラックでRosalíaっぽさがある。奄美に限らず、演歌歌手とか独特の節を持っている人の歌声にオートチューンがかかるだけでめちゃくちゃアガると思うのでそうした例があれば是非教えてください。

最近気になっていることなどを週1くらいでメモ的に吐き出していこうという試みです。人に見せるタイプの日記とも言えます。とりあえずは記述の正当性などあまり考えずにやっていくので「そんなこたないやろ」と思われる点も多々あるかと思いますが、なにとぞよろしくお願いします<3