「Nichijou Reanimated」インタビュー │ 約200名のアマチュア・アニメーターによる『日常』ファン創作

先日刊行された『ユリイカ2025年9月号 特集=あらゐけいいち』に寄稿しました。論題は「日常的実践のエゴイズム——アニメ『日常』をめぐるファン創作について」。

アニメ『日常』が放送された2011年というと、はげしくニコ厨だった自分はアニメ本編よりも音MADやらなんやらの二次創作を見ている時間のほうが長かったと思う。ので、そんな時代のことをまず書こうといろいろ調べていたら、アニメ放送から11年後の2022年に投稿された『Nichijou Reanimated』という映像を知った。

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主に英語圏のアマチュア・アニメーター約200名で『日常』第一話を再現したプロジェクトである。映像は、原作のシーケンスに従うだけ従うが、均して3.5秒ごとに作家が切り替わり、タッチどころか手法も異なり(手書き、CG、ピクセル、実写……)、無数のパロディが埋め込まれており(Undertale、マリオ、ポプテピピック……)、なんだか、200もの二次創作者たちの想像力が押し寄せてくるようである。

そこでひとまず話を聞いてみようと、『Nichijou Reanimated』の制作拠点ともなったDiscordサーバーに潜入し、取材を実施した。

参加してくれたのは、hali、Pengy、pumpf4、Pikupuyo。同プロジェクトの発起人から進行管理の役割を引き継いだ4名である(発起人への取材は未実施)。およそ2年に及ぶ制作を完全にオンラインで成し遂げたのは、当時10代だったこの4名の尽力によるそうだ。

いまや世界中で当たり前のように行われているファン創作の実践であるが、こうした大規模かつオンラインかつ非営利かつ草の根なプロジェクトは、ファンダム研究の観点からも面白い事例なのではないかと思い*1、本人らの許可のもと掲載する。

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【インタビュイー】

hali twitter, newgrounds, pixiv 
カナダ在住。2002年生まれ。
Pengy youtube
アメリカ在住。2004年生まれ。
pumpf4 bsky, mangaplus-creators
フランス在住。2002年生まれ。
Pikupuyo twitter
2005年生まれ。

※共通の質問テキストを送り、回答してもらった(実施日:2025年7月1日〜7月6日)。なお、インタビュイーの並びはそのときの回答順。

Q1. プロジェクトとの関わりについて

※以下では、プロジェクト全体を取りまとめる役割を「管理者」(インタビュイー)と、その他の参加者は「アニメーター」と表現する。

――「Nichijou Reanimated」はどのように始まり、あなたはどのように参加しましたか? 差し支えなければ参加当時のあなたの状況も教えてください。

hali:プロジェクトの正式な開始は2019年12月だったと思いますが、私は2020年1月中旬にDiscordサーバーに参加しました。そのとき私は18歳で、大学1年生でした。
私がプロジェクトを始めたわけではないので、正確にどう始まったかは分かりません。ですが、参加してから数か月後、最初にこのコラボを始めたリーダーが、私とPengyともう1人をプロジェクト管理に携わるよう任命ました。
その後数か月の間に、発起人の彼はリーダーの役目を降り、私たち3人に管理者を任せました。(ちなみに、彼はプロジェクトを始めた功績としてちゃんとクレジットされています。当初、私たちはあくまで彼の「スタッフ」でした)
約10か月後には、タイムゾーンのカバー範囲を広げるために4人目の管理者(pumpf4)を迎え入れています。*2

Pengy:2019年12月5日にサーバーに参加しました。私が16歳のときです。
『Nichijou Reanimated』はJoe Netley(別名NetleyBoif)によって開始しています。彼が当初準備したことは、プロジェクトの基盤となっています。それは、Twitterアカウント、メールアドレス、Discordサーバー、そしてアニメを各シーンに切り分けてラベル付けしたGoogleドライブフォルダでした。
その後、Netleyが「一人で進めるのは難しい」と感じたため、私とhali、そして3人目の管理者Pikupuyoがこれらを引き継ぐことになりました。
2021年の終わり頃には、プロジェクトに疲れたNetleyから私がリーダーの役割を引き継いで、彼に別れを告げました。そのとき、私は他の管理者たちと対等にサーバーを共同運営することを誓いました。
意見の対立はありましたが、権力を乱用することはなく、大きな内輪揉めもなくやり遂げられたことを誇りに思っています。意見が食い違うこともありましたが、慎重に話し合いを重ねて乗り越えました。他のコラボのサーバーも見てきた中で、これは奇跡だと思います。私たちはみんな偶然集まったのですが、全員が常識的で、うまく協力できたのはまさに天の采配(providence)でした。*3

pumpf42020年初めに参加しました。当時18歳だった私は3年間絵を描いていて、この前年にペンタブレットを入手していました。『日常』はずっと大好きなアニメの一つで、経験は浅かったのですが、プロジェクトへの参加に必要な画力には、自分も届いていそうだなと感じました。
だからこのプロジェクトは、自分のスキルを伸ばし、他のアーティストと出会い、コミュニティの一員になる機会として、とても楽しみにしていました。

Pikupuyo:私は2020年初めに参加しました。当時、ものすごくアニメに夢中になっていて、ちょうどメインの『日常』コミュニティでこのプロジェクトのことを聞いたんです。
そのころ私は15歳で、最終的に管理者になった人の中でも一番年下でした。だから、今振り返ると自分がどれだけ未熟だったか、笑えちゃいます。
もともと自分がアニメーターになるかどうかも分からなかったので、管理者側でプロジェクトを引き継ぐことになりました。当時は描くことにそこまで興味があったわけじゃなかったんです。

Q2. 制作プロセスについて

――プロジェクトはどのように進行しましたか? また、プロジェクト運営におけるあなたの役割は?

hali:アニメ全体を完成させたのは、開始から約2年3か月後、2022年4月でした。目標に対する進捗は遅く、ゆっくり、着実に進んでいました。でも、小規模ながら情熱あるオンラインコミュニティだったので、才能あるアニメーターが数多く参加してくれました。
アニメーターのリストはスプレッドシートで管理していました。私たち管理者は分担して、彼らの進捗確認のために定期的な連絡を行いました。制作が終盤になると、アニメの編集作業もしました。そこではオープニングの編集を手伝ってくれたアニメーターと一緒に作業しました。

Pengy:最初はNetleyがすべて一人で管理・運営をやっていましたが、2020年2月12日に「一人じゃ手に負えない」と言って、haliとPikupuyo、そして私に管理権限を与えました。その時に、Pikupuyoスプレッドシートを作成してくれました。それまでは「誰がどのシーンを担当しているか」を一元管理する仕組みがなかったので、非常に重要な仕事でした。
2020年を通しての活動といえば、主にコミュニティを楽しく盛り上げることでした。公には「完成するだろう」と楽観的に繰り返していたけれど、内心どこか「無理かもしれない」と思っていました。当時、『日常』は特に人気のあるアニメというわけではなかったんです。でも、驚くべきことに、COVID-19の流行がこのプロジェクトを後押ししました。
2021年以降、私の最も大きな仕事は監査でした。スプレッドシートで、参加アニメーターのDiscordアカウントやメールアドレス、Twitterのユーザー名をリスト化して、一人一人に連絡し、「続けられるか」という意思確認をしました。続ける人は残し、やめる人は削除しました。情報を最新に維持することが重要でした。*4 2021年の終わりには、「ただ楽しんでいるだけでなく、成功するかもしれない」と気づいて、より真剣にサーバー運営に取り組むようになりました。
結局、私は当時アニメーターではありませんでした。私が作ったのは0.5秒の1コマだけです。私が行ったオーガナイズ、マーケティングモデレーション――これらの作業は数多くの時間を要しましたが――と同じような努力を、多くのアニメーターがしてくれたと思います。個人的な意見ですが、このコラボを形にしたアニメーターたちこそ、私のような単なる管理者より何倍も価値ある存在だと思います。

pumpf4最初はアニメーターとして参加していました。参加したばかりの頃は、プロジェクトがどれくらい進んでいるかはあまり気にせず、自分の作品を見せてみんなと交流するのが楽しかったです。アニメーターが次々と入ってきては、シーンを選び取っていったのを覚えています。私が入った頃は、10秒以上連続したシーンを選ぶことも簡単でした。時が経つと、空いているシーンが疎らになってきて、新しいアニメーターが描きたい場面を選ぶのが難しくなっていきました。
2020年末に管理者の募集がありました。特に深く考えず応募したら採用されて、その役目を引き受けることになりました。

Pikupuyo:最初の頃、プロジェクトはとてもゆっくり進んでいました。というのも、当初の管理者(Netlyboif)が私生活でいろいろなことを抱えていて、プロジェクトを続けられなくなってしまったんです。それでも、みんなプロジェクトを続けたいという意志があり、Pengyがプロジェクトを引き継ぐことになりました。
たしか、私の管理者の申し出はジョークのようなものだったんですが、最終的にはとてもいいチームになりました。みんなで役割を分担していて、私の主な仕事はTwitterアカウントの運営とスプレッドシートの管理でした。(後にスプレッドシートの管理はhaliの担当になったと思います)

Q3. プロジェクト参加者について

――あなた自身を含めて、プロジェクトに参加した人たちは、最初どのようにして繋がりましたか? また、どんな国や年齢の方がいましたか?

hali:私は別の『日常』のサーバーでこのプロジェクトを知って、そこから参加しています。プロジェクトが始まってからも、みんなとの主なやり取りの場はDiscordで、DMやサーバーで連絡を取っていました。
主に口コミでアニメーターを集めていましたが、ときには積極的に参加者を探すこともありました。
他のReanimatedプロジェクトと連携して、お互いのDiscordサーバーでプロジェクトを宣伝し合うことがよくありました。
また、『日常』関連のアニメーションを過去に作ったことのあるアニメーター(例えばPEAR哥)にTwitterで声をかけて参加を募りました。フォロワーの多いPEAR哥に参加してもらえたことはとても大きく、そのおかげで多くの注目を集め、さらに多くのアニメーターが参加してくれました。
国や年齢層については、とても幅広い人たちがコラボに参加してくれました。私たちを含め、多くはアメリカやカナダ出身でしたが、他にもフランス、イギリス、日本、オーストラリア、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど、様々な国から参加がありました。

Pengy:私はReddit経由で参加しました。
このプロジェクトはTwitterでも活動していました。その後、YouTubeチャンネルを作ったことで、それを見て参加したメンバーもいました。また、他のサーバーと提携もしていました。
ゴールが近づく頃、有名なアニメーターのPEAR哥などもプロジェクトに参加し、そのファン層を集めることができました。PEAR哥を招待できたのは、Pikupuyoがメッセージを送ったおかげです。
国籍についてはとても多様でした。参加者の大半は北米出身でしたが、南米や東南アジアのメンバーも多かったです。『日常』は「selamat pagi」や「selamat malam」(スラマッパギ/スラマッマラム)などのギャグのおかげで、マレー語圏ではとても人気があります。もちろん、東アジアからの参加者もいました。
年齢層に関しては、やや多様性に欠けていました。全員が13歳から20代前半の若者です。私自身は中間層で、16歳から18歳のやや年上のグループに属していました。

pumpf4私の知る限り、参加者の多くはTwitterを通じて集まりましたし、私もそうでした。
年齢層も国もとても多様で、全部挙げるのは難しいですが、皆Discordサーバーでやり取りしていました。異なるタイムゾーンに管理者がいることは、私たちのチームにとって強みになりました(※pumpf4はフランス在住)。

Pikupuyo:私たちはみんなDiscordサーバーでつながっていました。プロジェクトの主な宣伝手段はTwitterアカウントと、メインの『日常』サーバーで話題にしてもらうことでした。
プロジェクトに参加したアニメーターの多くは10代だったと思いますが、本当に世界中から人が集まっていました。英語圏以外の国からこんなにたくさんの人が参加してくれたのは驚きでしたし、とても感動しました。


PEAR哥の過去作品

Q4. プロジェクトの困難さについて

――プロジェクトを進めるにあたって、特に苦労したことはありましたか?

hali:進行が一時的に停滞して、プロジェクトの完成は不可能なんじゃないかと感じることが何度もありました。そういう時期は大変でしたが、「いつか完成する」と信じて踏ん張って、実際にその通りになりました。
具体的な事件として、同じシーンが複数のアニメーターに割り当てられるという、コミュニケーション上のトラブルが何度かありました。責任を持って修正するために、苦しい話し合いをしなければならない場面もありました。
また、プロジェクトの最後には、YouTube著作権に引っかからず動画を公開することが大きな課題でした。アニメスタジオの親会社であるKADOKAWAに削除されないよう、何度かアップロードをやり直す必要がありました。

Pengy:人間関係です。私たちは若くて経験が浅く、相手に寛容になりすぎてしまいました。その結果、迷惑だったり妨げになったり、有害だったりする人もいました。うまく意思疎通できないことも多く、本来なら早めに対処すべき問題を放置してしまったこともあります。
規則を作ってそれに従うだけで、心からのルールを設けることができなかったんです。迷惑な人がいても、ルールを破らない限り放置してしまいました。今では笑い話みたいですが、当時は特定の人のせいでお腹が痛くなることもありました。
もうひとつの大きな課題は、このプロジェクトの規模の大きさでした。作業自体は難しくありませんでしたが、最初の1年は「完成する気がしない」と感じていました。それでも諦めずに進め続けました。

pumpf4私が管理者に応募したすぐ後に、プロジェクトの宣伝*5としてオープニング映像を単独で公開することが決まりました。そうしてオープニングのシーンに締切を設定し、私はこれが守られるよう確認する役目を引き受けました。この役割にはとてもストレスがあり、アニメーターに連絡するたびに気が引けました。誰も締切を急かすマネージャーにはなりたくないものです。ですが、そのオープニング映像を公開したおかげで、全体のプロジェクトに勢いがつきました。
サーバー運営も、時には大変でした。ユーザー同士の緊張があったり、スパムがいたり、偽のシーンが発覚したり。問題が起こるのはまれでしたが、実際に発生したんです。そのたびに迅速な対応が必要でした。

Pikupuyo:プロジェクトの途中、私は数週間ほど入院していました。この時期は自分の人生でもとてもつらい時期で、プロジェクトについていくのがすごく大変でした。その結果、療養中にしばらく連絡が取れない時期もありました。でも、このプロジェクトの人たちはとても優しくて、あまり理由を話せなくても戻ってこられる場所となっていて、本当にありがたかったです。

Q5. 成果や達成について

――反対に、このプロジェクトに取り組んでいて嬉しかったこと、達成感を感じたことは何ですか?

hali:プロジェクト進行中は楽しい思い出だらけです。Discordサーバーはとても活発で、アニメーターやゲストと交流したり、ゲームをしたり。結果的に、今も定期的に連絡を取り合うオンラインの友達がたくさんできました。
最も達成感があったのは、YouTubeでの公開の前日、サーバーメンバー限定で最終編集版を配信したときです。いくつか技術的な問題はあったものの、うまくいって、みんなとても盛り上がりました。2年間の努力の集大成としてプロジェクトを完成させる瞬間でした。
また、NewgroundsYouTubeでコメントを読むのもとても嬉しいです。みんながこの作品を気に入ってくれているように感じます。

Pengy:人間関係です。このサーバーを通じて、とても強い絆で結ばれた友達ができました。その数は50人、いや100人にものぼるかもしれません。
プロジェクトが絶望的に思えたときも、その人たちのおかげで続けるべき価値を感じられました。プロジェクトが順調に進んでいるときは、その人たちのおかげで全力を注ぐべき価値があると感じられました。自分を差し出した分、本当に多くのものを受け取れたと思います。
もちろん、作品そのものが喜びを与えていなかったなんて言えば、嘘になります。毎日『日常』の新しいファンアートが届くのを眺めるのが仕事なんです。それもアニメーション。興奮しないわけがないですよね? どのスタイルも、どの映像も、どのアニメーターも、それぞれ独自の個性を持っていました。
そして、最終的なプロジェクトが多くの人に届いたとき、とても大きな達成感がありました。動画に寄せられるコメントを何日もかけて読みました。今ではYouTubeで37万回ほど再生されていると思います。最初に始めた頃は、こんなことになるなんて想像もしていませんでした。

pumpf4長い間関わっていたからこそ、プロジェクトが完成に近づく実感を覚えては、とてもやりがいを感じました。自分のシーンを作る楽しさに加えて、いくつかのサイドプロジェクトもとても楽しみました。
プロジェクトを宣伝するために、麻衣というキャラクターが登場するいくつかのシーンを編集しました。
いくつかパロディ漫画も作り、それをコミュニティの人たちと共有できたことは、今でも良い思い出です。

Pikupuyo:こんなにも結びつきの強いコミュニティを作れたことです。それこそが、このプロジェクトを実現させた原動力になったと思います。
みんなが情熱を持っていなかったら、最初の「管理者交代」という壁すら乗り越えられなかったと思います。みんなと話すのは本当に楽しかったし、このプロジェクトをきっかけに、すごくいい友達になれたと感じています。一人では絶対にできなかったことなので、『日常』について一緒に語り合える人たちがいてくれたことが何より大事でした。

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Q6. コミュニティについて

――サーバーでは皆でゲームをしたり漫画を作ったりもしていましたね。このプロジェクトは単にReanimated作品を作るだけでなく、『日常』ファンがコミュニティを作り、友情を育む場にもなっていたと思います。ここで出会った人たちとの関わりについて、あなたはどのように考えていますか?

hali:私にとってとても大事な場所で、ここで出会った多くの友情は今も続いています。アニメーターとしてだけでなく、運営を支える立場としてもこのコラボに貢献できたことを、とても嬉しく思います。サーバーでのゲームや漫画などの交流はコミュニティ意識を育み、それが参加者の制作意欲を支えていました。

Pengy:メンバー一人一人がとても大切な存在です。5年来の友達もいれば、もっと短い付き合いの人もいますが、彼らは私の最初のDiscordの友人たちです。私の絵の技術を向上させてくれた人もいました。そしてみんなが、このコミュニティを素晴らしい場所にするために貢献してくれました。
一つのサブプロジェクトについてお話させてください。「kneecheejoe」というものです(「nichijou」のスペルミスです)。アニメーターのSnowiiが、わざと雑に描いた『日常』のファンコミックを作ったことから始まりました。わざと下手に描かれているので、絵が描けないメンバーでも気軽に参加できました。
「kneecheejoe」チャンネルにはたくさんのファンコミックが残っています。1人が1ページを描いて、次の人が継いで話を膨らませる、という長編の物語も作りました。とてもランダムですが、本家の『日常』も同じくらいランダムなので、その精神に近いものだと思います。
いつか公開してもいいかもしれません。たくさんの人が関わっているので手続き的にどうするべきかわかりませんが、サーバーの中ではすぐに見つけられます。

pumpf4私は今はもうサーバーでは活動していません。でも、当時出会った人たちはとても大切な存在です。時間は経ちましたが、今でも友人だと思っている人もいます。これは、アートへの情熱が人をつなげるよい例だと感じます。単なるプロジェクトというより、自分の人生の一部のように思います。

Pikupuyo:さっきも話した通り、このサーバーは『日常』愛する人たちが集まったコミュニティでした。コミュニティにいた全員がプロジェクトに参加していたわけではなかったんです。
他にも大きな『日常』ファンサーバーはありますが、そこにはない魅力があったのだと思います。
人数が少なくて共通の目標があったから、人がすごく近くに感じられました。このコミュニティの人たちは、私がとても孤独だった頃にできた最高の友達の一部でした。
今はもう全部遠くなってしまいましたが、ここで過ごした時間は何にも代えがたいし、そこにいてくれたみんなに感謝しています。

Q7. 『日常』の魅力について

――あなたは世界で最も熱心な『日常』ファンの一人ではないかと思います。あなたにとって『日常』の魅力は何ですか?

hali:私より『日常』が好きな人もきっといると思いますが、私も間違いなく大ファンです。私の好きなアニメのジャンルは日常系で、『日常』はそれを極限まで突き詰めた作品です。この作品のばかばかしさが好きです。特に、ゆったりした丁寧な場面との対比が魅力です。
アートスタイルもとても気に入っています。それがきっかけで自分でも絵を描き、自分のスタイルやキャラクターを作るようになりました。

Pengy:その評価に異論はありません。『日常』は、とても特別なアニメでした。何があっても好きになっていたとは思いますが、これが私にとって2番目に観たアニメだという事実が、特別な愛着を生んだはずです。ユーモア、アニメのクオリティの高さ、音楽、あらゆる要素が完璧に作られていると思います。
一番好きなキャラクターは東雲なのですが、登場人物全員がとても魅力的です。お気に入りトップ5は、なの、さかもと、ゆっこ、みお、そして中村先生です。
アルバム『日常のリミックス』もお気に入りです。キャラソンも大好きですし、『なののネジ回しラプソディ』が一番好きです。英語に翻訳しようとしたこともありますが、私には歌えないので、そのままどこかのファイルに眠っています。
『日常』に出会ったのは、私があまりよくない時期にあったときでした。『日常』の素晴らしさは変わらないけれど、当時の私はちょうど、そういう作品を必要としていたんです。

pumpf4『日常』、そしてあらゐけいいち先生の作品全体は、私がこれまで見たどんなものとも違います。視覚的なコメディと面白い会話のバランスが、他に類を見ないほど絶妙です。
アニメ版はそのテンポによって『日常』を新たなレベルへと引き上げ、視聴者がその世界やキャラクターについてじっくり思いを巡らせる余白を与え、そしてあらゐ先生の漫画の大きな魅力である「つながりのある世界観」をさらに際立たせています。
どのキャラクターの行動も他のキャラクターに影響を及ぼし、それによって同じ街にみんなが住んでいると感じられます。
アニメでも漫画でも、「絵で伝えたいことを伝えられる」という強い自信に満ちた作品だと思います。表情は独特で、線は緻密、コマ割りもとても巧みです。「刺激的」と言うだけでは足りません。褒めすぎに聞こえるかもしれませんが、本当に彼の作品を尊敬しています。

Pikupuyo:『日常』は私が読んだ中でも一番面白い漫画のひとつですが、同時に、一番心温まる作品でもあります。
『日常』が自分にとって大事なのは、根本的には「なじむことについての物語」だからです。
最初に『日常』を観たのは、自分の人生でちょうど、「自分の風変わりなところをそんなに気にしなくていいんだよ」と言ってもらう必要があった時期でした。自分の背中にもネジが付いているような気がしていたんです(なのみたいに)。だから、彼女がネジを受け入れたとき、自分も受け入れられるような気がしたんです。
今でもそのことを考えると泣きそうになります。この作品は、今の私が私である理由のひとつだと思います。

youtu.be

Q8. Re-animated(再アニメ化)について

――このプロジェクトは、単なる再現ではなくそれぞれのアニメーターが「書き換える」ことに魅力があります。こういった創作について、考えをおしえてください。

hali:「自分のものにすること」がReanimatedコラボの核心だと思います。もし何も新しい要素がない、単なる一コマずつのリメイクだったら、ちょっと退屈でしょう。
カメラアングルやアートスタイルの多様さは、このコラボの強みの一つです。各アニメーターがそれぞれの解釈を込めることができ、それらが合わさることで多様な考え方が混ざり合う楽しい作品になります。
とはいえ、各シーンが短すぎず、きちんと次のカットに繋がるようにすることも大事です。そうしないと、観客にとって情報過多な作品になってしまいます。

Pengy:私たちのReanimatedでは、たくさんの「書き換え」がありました。
私のお気に入りのひとつは、Playstyというアニメーターのものです。彼はオリジナルのシーンにミームを加えました。たとえば『Among Us』のインポスターになったビッグチュンガスなどです。また、別のアニメーターのSatriaは、なのが爆発しそうな場面に大量のボム兵を仕込みました。
このプロジェクトは公式設定に縛られないので、独特のおかしさや自由な創造性が自然に生まれて、アニメーターにとっても面白いんです。自分の個性を好きに加えられますから。
その点は、視聴者からしても面白いです。すでに見たことのある作品なのに、「今度はどうなるんだろう?」とつい気になってしまう。とても新鮮な体験で、それこそがReanimatedコラボの魅力の一部だと思います。
私もいくつかイースターエッグを入れました。たとえば、『Dayshift at Freddy’s』に登場する電話頭のキャラクター・スティーブンのネタを入れました。彼はサーバーのマスコットになっていたんです。
思えば、このプロジェクトは『日常』とは全く別の独自の文化を育んでいて、サーバーの固定メッセージを見れば分かるように、たくさんのくだらない内輪ネタが生まれました。その中から成果物に入り込んだものもあります。
すごいことに、この小さなサーバーで生まれたジョークのいくつかは、今や何十万もの人に見られているんです。

pumpf4シーンごとの作風が担当するアニメーターに委ねられる形になったのは、プロジェクトへの参加条件がとても緩かったおかげでしょう。最初からそうするつもりだったのかは分かりませんが、新しいアーティストが参加して、どんなものを作るか想像するのは本当にワクワクしました。
それは動画を観るときにも感じられます。数秒ごとに絵柄が変わり、次に何が来るのか予想がつきません。こういうタイプのコラボはYouTubeではよくありますが、アニメ1話を丸ごと完成させられるものは少ないので、自分も他のみんなもいい仕事をしたと思います。

Pikupuyo:(未回答)

Q9. 最後に

――最後に、シャウトアウトしたいことがあればどうぞ!

hali:まず何より、このプロジェクトを本当に形にしてくれた全てのアニメーターに感謝を伝えたいです。ぜひ彼らの他のアニメーションや作品も見てみてください。
また、(この文章を書いている時点で)もうすぐ放送予定の、京都アニメーション制作の『CITY』も紹介したいです。これは『日常』の続編にあたるあらゐけいいち先生の漫画を原作にしていて、私の大好きな作品の一つです。この新しいアニメが成功してほしいです。ぜひ見てみてください!

Pengy:「カービィ Reanimated」に感謝を。私が最初に観たReanimated作品で、こういうプロジェクトが存在することを教えてくれました。あれがなかったら、「Nichijou Reanimated」にも参加していなかったと思います。

pumpf4「Nichijou Reanimated」の他の管理者のみんなに感謝を伝えたいです。しばらく話していませんが、みんな元気でいてくれたら嬉しいです。

Pikupuyo:私が『日常』で一番好きなキャラクターは安中さん(安中榛名)です。屋上から彼女の名前を叫びたいくらい――みんな、どうか安中榛名を愛して!

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ユリイカ』では以上のプロジェクトを中心に、国内におけるニコ動時代のファン創作や、あらゐけいいちの漫画のファン創作的手つきなどについてなどを執筆しました。ファン創作の手つきを分析するのに、荒井柚月さんの音MAD研究発表なども引用しました。そちらもぜひご一読を〜。

www.seidosha.co.jp

*1:そもそもの「Reanimated Collaboration」という文化についてはユリイカの記事に書いた。ざっくり言えば、2000年代のNewgroundsで準備され、2010年代のYouTubeで花開いた共同創作文化である。セーラームーンスポンジボブを題材にしたものなどがあり、それぞれ100万回以上再生されている。

*2:管理者は、各国から参加したアニメーターへの進捗確認が定常的な業務であった。管理者が北米に偏っていたことから、フランス在住のpumpf4を迎えることで時差を埋めようと試みたものと思われる

*3:多くのReanimated Collaborationは頓挫する。Discordサーバー「Reanimated Station Community」から辿っていけば、新たなサーバーが立てられては投棄される様子を見ることができる。また、オンラインの共同作業について、2000年代のNewgroundsを調べた研究では、スタートした企画の約2割しか完成に至らないという。

*4:Discordサーバーを見ると、「アニメーターとして手を挙げたのに長時間放置する参加者」の存在に苦慮していたことがよくわかる。なんなら、気づいたときにはDiscordのアカウントを消してしまう者も。あくまでオンラインの希薄な紐帯であることが、大所帯なプロジェクトを遂行するのに大きな壁となっていた。

*5:管理者たちの言う「宣伝」は、アニメーターの募集という意味合いが強い。Discordサーバーを見ると、制作のかなり終盤まで継続してアニメーターを募集していたようだ。アニメーターに割り当てたはずのシーンが未了のまま放置されることが絶えなかったため、常に空きシーンがあり、WIPの状態でも公開して新規募集をかける、ということを繰り返し行っていたのである